音読で見られる子供のつまずきと原因
毎日の宿題として出やすい「音読」
音読が苦手という相談をコグトレ塾ではよくお聴きします。
前回は音読を行うときに使われる、機能や能力についてお話ししました。
音読はなぜ毎日行うの?
今回は、実際にお子さんが音読をしているときに見られる課題と、その原因について紹介します。
音読ができる前提
「音読が苦手」というお子さんの中にも、様々な苦手さを有するお子さんがいらっしゃいます。
①ひらがな・カタカナを読むことが出来ない音読の苦手さ
②漢字を読むことが出来ない音読の苦手さ
③言葉の区切りが分からない音読の苦手さ
④改行の時に段を飛ばして読んでしまう音読の苦手さ
⑤長い文章を読むことが辛い、集中が切れてしまう音読の苦手さ
⑥スラスラ音読をすることが出来るけれど、文章の内容の理解ができない音読の苦手さ
などなど…
お子さんに思い当たる音読の苦手さがあった方もいらっしゃるかもしれません。
今回はこの中で3つだけ焦点を当てて説明を致します。
逐次読みってなに?
さて一つ目は、文章を読むときになめらかに読むことができずに、途切れ途切れに文章を読む状態です。これを「逐次読み(ちくじよみ)」といいます。
特に小学校に入りたてのお子さんや、まだ文章を読むことに慣れていないお子さんに多く見られます。
この状態の原因は
・文字をまとまりとして捉えられないこと
・文章に出てくる言葉を知らないこと
などが考えられます。
音読をしているときに言葉のまとまりでよむために
私たちが音読などで文章を読む際は、実は一文字ずつ見ているわけではなく、文字のまとまりとしてとらえ(単語や文節)、意味の理解をおこなっていきます。
このまとまりとしてとらえることが難しい状態では、すらすらと文章は読めません。
また、大人でも知らない言葉が出てくるとすらすらと読む事は難しいです。
例えば英語の文章を読むときなど、知らない単語があれば流暢に読むことが難しいどころか、ほぼ不可能に近いと思います。
この逐次読みでなかなか改善が見られないのは、文字を見たときに頭の中で音に変換できない場合です。
こういったお子さんの特徴は、大人や友達と話すときには流暢になめらかに話すことができるけれど、いざ文章を読むとなったらたどたどしくなるところにあります。
ひらがなの理解が十分でない状態(文字をみて音に変換し、音を聞いて文字を想起できること)で読みを強要すると、読むことへの拒否感が高まります。
まずは日常会話の中から、モノの名前と文字(形と音)を一致させていくなど、興味を失わないように関わることが大切です。
子どもの音読で起こりやすい「読み間違い」
二つ目は、読み飛ばしをしてしまう、読み間違いをしてしまうことです。
この状態の原因は、
・目の動きが上手に文字を追えていないこと
が考えられます。
先ほど述べたように、私たちが文章を読む際は文字を一文字ずつ見ているわけではありません。文字をまとまりとして捉えるために、微細な目のジャンプ(サッケード)を頻回にしながら読み進めています。
つまり、文字のまとまりごとに上手に目で追うことができなければ、正しい視覚情報は入力されないのです。
これにより、文字を読み飛ばしたり、書いてある文章と違う表現で置き換えてしまうということが起こっています。
この時に「ゆっくり読んでね」といっても上手にできない時には注意が必要です。
言葉の意味の理解
三つ目は、音読で文章を読んでも意味の理解ができていない状態です。
これは音読に限らずテストや毎日の宿題で文章題を解く時にもそうですが、文章を読む上で非常に重要なことです。
この状態の原因は、
・ 一時的な記憶の保持と処理(ワーキングメモリー)の苦手さがあること
が考えられます。
私たちが文章を読む際には、読んだ情報を一時的に脳の記憶の貯留庫へ貯めておきます。
そして読み進めていった文章の理解を深め、文章の整合性を保ちながら読み進めていくことに使われます。
登場人物がどのようなことを行って、その時にどう感じていたか、またそれに対して他の人が何を行ったのかなど、時系列に沿って物事を理解できるのです。
音読が嫌いになっていませんか?
いかがでしたでしょうか、今回はお子さんが音読をしているときに見られる課題と、その原因について紹介してきました。
音読ができていない状態に焦る気持ちはわかります。お子さんの成長を願うからこそ、不安な気持ちが募るのだと思います。
一方で、音読で何度も読み直すように指摘されたり、間違えを非難されたりすると、子どもは「読む」という行為への興味を失っていきます。
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参考文献
・小坂大介,都築繁幸:音韻認識の視点から学習障害児の読み書きを考える. 治療教育学研究3 : 103-112, 2004
・丸久友理子,岡真由美:注意欠如多動性障害(ADHD)児における眼球運動が読字に及ぼす影響. 日本視能訓練士協会誌 45:79-86, 2016
・鴨下賢一:発達が気になる子への 読み書き指導ことはじめ. 中央法規, 東京, 2016