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WISC-Ⅴの「視空間」「流動性推理」「処理速度」が低い子どもの特徴と学習支援・サポート方法

お子さんの学習面や生活面での困りごとについて、「なぜ勉強に時間がかかるのだろう」「話を聞けば理解できるのに、宿題になるとうまく取り組めないのはなぜだろう」と感じたことはありませんか。
お子さんの苦手なことや得意なこと、学校や家庭で困りごとが起きる背景を知るための方法の一つが、知能検査です。知能検査にはさまざまな種類がありますが、子どもの認知面の特徴を調べる検査として、広く知られているものにWISC(ウィスク)があります。
WISCには複数のバージョンがあり、現在広く使われているものの一つがWISC-Ⅴ(ウィスク・ファイブ)です。WISC-Ⅴでは、子どもの知的な能力を複数の側面から調べることができます。
WISC-Ⅴで調べる主な5つの指標は、次のとおりです。

•言語理解:聞いた言葉の意味を理解したり、言葉を使って考えたり、説明したりする力
•視空間:見たものの形や位置、全体と部分の関係を捉える力
•流動性推理:初めて見る問題から規則性や法則を見つけ、筋道を立てて考える力
•ワーキングメモリー:聞いたことや見たことを一時的に覚え、必要に応じて使う力
•処理速度:簡単な視覚情報を素早く見分け、正確に作業する力

WISC-Ⅴの検査結果では、これら5つの指標がすべて同じ点数になるとは限りません。得意な能力と苦手な能力があることは自然なことです。一方で、指標ごとの得点に大きな差がある場合、学校での学習や宿題、日常生活のさまざまな場面で困りごとが生じることがあります。
ただし、WISC-Ⅴの得点だけで、子どもの苦手さの原因や学習上の問題がすべて分かるわけではありません。検査結果は、本人の様子や学校での学習状況、家庭での生活の様子などと合わせて理解することが大切です。
今回は、WISC-Ⅴの「視空間」「流動性推理」「処理速度」が、相対的に「言語理解」や「ワーキングメモリー」よりも苦手な子どもについて、特徴や学習面での困りごと、家庭や学校でできる支援・サポート方法を紹介します。

WISC-Ⅴの「視空間」「流動性推理」「処理速度」に共通する特徴

WISC-Ⅴの視空間、流動性推理、処理速度は、それぞれ異なる能力を調べる指標です。ただし、見た情報を手がかりに考えたり、情報を整理したり、作業したりする場面と関係しています。
それぞれの指標がどのような力を表しているのか、詳しく見ていきましょう。

視空間:見たものの形・位置・全体像を捉える力
視空間は、図形や物の形、位置関係、全体と部分の関係などを理解する力に関係しています。視空間が相対的に苦手な子どもは、図形の問題やパズル、図を見ながら行う作業などで難しさを感じることがあります。

流動性推理:初めての問題から規則性を見つけて考える力
流動性推理は、これまでに学んだ知識をそのまま使うだけでなく、初めて見る問題の中から法則や規則性を見つけ、答えを導く力に関係しています。流動性推理が相対的に苦手な子どもは、算数の応用問題や、問題の出され方が変わったときに戸惑うことがあります。

処理速度:視覚情報を素早く見分け、正確に作業する力
処理速度は、簡単な視覚情報を見分けたり、決められた作業を一定の時間内に正確に進めたりする力に関係しています。処理速度が相対的に苦手な子どもは、問題の答えが分かっていても、書き終えるまでに時間がかかることがあります。

このように、視空間、流動性推理、処理速度は別々の能力ですが、学校での学習や生活の中では、見た情報を読み取る、考える、書く、作業するといった活動に関係します。そのため、これらの指標に得意・不得意の差があると、学習の進め方や課題への取り組み方に影響する場合があります。

WISC-Ⅴの「視空間」が低い子どもの特徴と学習面の困りごと

WISC-Ⅴの視空間がほかの指標と比べて低い子どもは、見たものの形や位置、全体像を捉えることに難しさを感じる場合があります。
例えば、次のような困りごとが見られることがあります。

•図形の問題やパズルが苦手
•算数の筆算で桁がずれやすい
•マス目に沿って文字を書くことが難しい
•図や地図を見て位置関係を理解しにくい
•黒板の文字をノートに写すのに時間がかかる
•工作や折り紙、図形の模写が苦手
•見本を見ながら同じように作業することに戸惑う

こうした子どもは、先生の説明を聞いて内容を理解できていても、黒板の図や表をノートに写す場面で時間がかかることがあります。また、算数の筆算では計算方法が分かっていても、数字の位置がずれて間違えてしまうこともあります。
このような様子だけを見て、「注意力が足りない」「丁寧に書いていない」と判断するのではなく、視空間の得意・不得意や、課題の見せ方が本人に合っているかを考えることが大切です。

視空間が苦手な子どもへの学習支援・サポート方法

家庭や学校で支援するときは、言葉だけで説明するのではなく、実物や具体物、図、色分けなどを使って、見て理解しやすい方法を工夫すると役立つことがあります。
例えば、算数の筆算では桁ごとに色を分けたり、マス目のあるノートを使ったりする方法があります。工作や折り紙では完成形だけを見せるのではなく、途中の見本を用意すると、手順を理解しやすくなる場合があります。
また、黒板を写すことに時間がかかる場合は、板書の一部をプリントで配布する、写す量を調整する、重要な部分をあらかじめ示すなど、学校での学習環境を調整することも考えられます。
視空間の苦手さを無理に克服させようとするだけでなく、本人が理解しやすい方法を見つけ、学習に取り組みやすい環境を整えることが大切です。

WISC-Ⅴの「流動性推理」が低い子どもの特徴と学習面の困りごと

WISC-Ⅴの流動性推理がほかの指標と比べて低い子どもは、初めて見る問題の中から規則性を見つけたり、複数の情報を組み合わせて考えたりすることに難しさを感じる場合があります。
例えば、次のような特徴が見られることがあります。

•初めて見る問題で、どう考えればよいか迷う
•数字の規則性を見つけるのが苦手
•算数の文章題で、解き方を考えるのに時間がかかる
•応用問題になると、急に手が止まる
•似た問題でも、出し方が変わると解けなくなる
•複数の情報を組み合わせて答えを導くことが難しい
•例題では解けても、少し違う問題になると戸惑う

例えば、学校の算数で、計算の手順を覚えている問題は解けても、文章題になると何を使って解けばよいのか分からなくなることがあります。また、先生が説明した例題では理解できたように見えても、数字や問題の形式が変わると、自分で考え方を応用することが難しい場合があります。
このような場合、単に「勉強を理解していない」「応用力がない」と考えるのではなく、問題の中から必要な情報を見つけ、解き方を考えるまでの過程で困っている可能性を考えることが大切です。

流動性推理が苦手な子どもへの学習支援・サポート方法

流動性推理が苦手な子どもには、いきなり難しい応用問題を解かせるのではなく、考え方を小さな手順に分けて伝える方法が役立ちます。
例えば、算数の文章題であれば、「何が分かっているかな」「何を聞かれているかな」「どの数字を使うかな」「どの計算をすればよいかな」と、順番に確認します。必要に応じて、具体物や図を使い、問題の内容を目で見て整理できるようにすることも有効です。
また、初めての問題に取り組むときは、似た問題の例を示し、どこが同じでどこが違うのかを一緒に確認すると、考え方をつかみやすくなる場合があります。解き方を覚えるだけでなく、なぜその方法を使うのかを具体的に説明することも大切です。
学校の宿題や家庭学習では、難しい問題を一度にたくさん出すよりも、少しずつ段階を踏んで練習できるようにすると、子どもが自信を持って取り組みやすくなります。

WISC-Ⅴの「処理速度」が低い子どもの特徴と学習面の困りごと

WISC-Ⅴの処理速度がほかの指標と比べて低い子どもは、簡単な視覚情報を見分けたり、文字を書いたり、決められた作業を進めたりすることに時間がかかる場合があります。
例えば、次のような困りごとが見られることがあります。

•問題を解く力はあるのに、テストが最後まで終わらない
•黒板の文字をノートに写すのが遅い
•文字を書くことに時間がかかる
•プリントの問題を解き終えるのが遅い
•答えが分かっていても、書くまでに時間がかかる
•急かされるとミスが増えたり、焦ってしまったりする
•授業中の書き取りや板書に追いつけないことがある

例えば、先生の質問に口頭では正しく答えられるのに、テストでは解答欄をすべて埋めることができない子どもがいます。また、授業内容を理解していても、ノートを書く作業に時間がかかり、次の説明を聞き逃してしまう場合もあります。
こうした子どもは、周囲から「もっと早く書こう」「集中して取り組もう」と言われることが多くなるかもしれません。しかし、作業に時間がかかる背景には、本人の努力だけでは解決しにくい認知面の特徴が関係している可能性もあります。

※なお、ここで紹介する特徴は、WISC-Ⅴの特定の指標が相対的に低い子どもに必ず見られるものではありません。同じような困りごとがあっても、その背景は子どもによって異なります。検査結果だけで原因を判断せず、実際の学習状況や本人の様子と合わせて理解することが大切です。

処理速度が苦手な子どもへの学習支援・サポート方法

処理速度が苦手な子どもへの支援では、速さだけを求めるのではなく、本人が理解していることを十分に発揮できるようにすることが大切です。
例えば、課題の量を調整する、テストや作業に十分な時間を確保する、黒板の内容をプリントで配布する、書く量を減らすといった工夫が考えられます。また、答えを考える力と書く作業にかかる時間を分けて捉え、必要に応じて口頭で答える方法や選択式の問題を取り入れることも役立ちます。
家庭で宿題に取り組む際も、時間がかかることだけを問題にするのではなく、どの作業に時間がかかっているのかを確認すると、具体的なサポート方法を見つけやすくなります。

WISC-Ⅴの指標の凸凹が、読む・書く学習や学校生活に与える影響

WISC-Ⅴの視空間、流動性推理、処理速度が相対的に苦手で、言語理解やワーキングメモリーが比較的得意な子どもの中には、話を聞いて理解したり、自分の考えを言葉で説明したりすることはできても、文字を書いたり、図や見本を見ながら作業したりすることに難しさを感じる子どもがいます。
例えば、会話では自分の考えをしっかり説明できるのに、作文になると何を書けばよいか分からなくなったり、漢字の書き取りを嫌がったりすることがあります。また、「次にこれをしてね」と口頭で説明されれば行動できても、予定表を見ながら準備を進めたり、見本を見て同じように作業したりすることが難しい場合もあります。
学校の宿題には、漢字の書き取り、計算問題、作文、プリントへの記入など、文字を書いて答える課題が多くあります。そのため、学習内容を理解していても、書く作業に時間がかかる子どもは、宿題がなかなか終わらないことがあります。
その結果、周囲から「宿題をやらない」「やる気がない」「まじめに取り組んでいない」と誤解されてしまうこともあります。しかし、実際には、課題の内容が理解できないのではなく、見た情報を整理することや、考えたことを文字にすること、決められた時間内に作業することに難しさを感じている可能性があります。
もちろん、WISC-Ⅴの指標だけで、読むことや書くことの苦手さがすべて説明できるわけではありません。読み書きの困難にはさまざまな背景が考えられるため、本人の学習状況や学校生活の様子を確認しながら、必要に応じて専門家に相談することも大切です。

家庭や学校でできるWISC-Ⅴの結果に応じた支援・サポート

WISC-Ⅴの検査結果を子どもの学習支援に活用するときは、苦手な能力だけに注目するのではなく、得意な能力や本人が取り組みやすい方法も確認することが大切です。

1.実物や具体物、色分け、見本を使う

視空間が苦手な子どもには、言葉だけで説明するのではなく、実物や具体物、図、色分け、見本などを活用します。算数では桁ごとに色を分けたり、図形の問題では実際に形を動かしたりすると、位置関係や形の特徴を理解しやすくなる場合があります。

2.問題の解き方を小さな手順に分ける

流動性推理が苦手な子どもには、初めて見る問題を一度に解かせるのではなく、考える手順を小さく分けて説明します。文章題であれば、問題文を読む、必要な情報を見つける、図にする、計算方法を考える、答えを確認するというように、順番を整理して取り組めるようにします。

3.作業量や時間を調整する

処理速度が苦手な子どもには、課題の量を調整したり、十分な時間を確保したりする工夫が役立ちます。学校では、板書の量を減らす、プリントを活用する、必要に応じてテストの時間について相談するといった支援も考えられます。

4.口頭で答える方法や選択式の問題を取り入れる

答えを考えることはできても、書くことに時間がかかる場合は、口頭で答える、選択肢から選ぶ、書く量を減らすなど、学習内容を理解しているか確認する方法を工夫します。文字を書くことだけに負担が集中しないようにすることで、本人の理解度や考える力を把握しやすくなります。

5.手順表やチェックリストで見通しを持てるようにする

複数の作業を順番に進めることが難しい場合は、手順表やチェックリストを活用します。次に何をすればよいのかを目で見て確認できるようにすると、準備や宿題に取り組みやすくなることがあります。

6.できたことや工夫したことを具体的に認める

作業に時間がかかる子どもには、速さだけを評価するのではなく、正確にできたこと、自分で考えたこと、工夫して取り組めたことなどを具体的に認めることが大切です。苦手な課題に取り組むときも、小さな達成を積み重ねることで、学習への自信につながる場合があります。
このような支援・サポートは、家庭だけで行う必要はありません。WISC-Ⅴの検査結果や日常生活での困りごとを、必要に応じて担任の先生や学校の相談担当者、検査を実施した専門家などと共有し、本人に合った学習環境を一緒に考えていくことも大切です。

WISC-Ⅴで分かった得意な力を活かし、子どもに合った学習支援を

WISC-Ⅴで視空間、流動性推理、処理速度が相対的に苦手な子どもは、図形や位置関係を理解すること、初めての問題を考えること、文字を書いたり作業を進めたりすることに難しさを感じる場合があります。
一方で、言語理解などが比較的得意な場合は、言葉で説明を聞いたり、自分の考えを話したりする方法が、学習の助けになることがあります。
例えば、作文を書く前に、まず何を書きたいのかを話してもらい、話した内容をメモにしてから文章にまとめる方法があります。漢字を覚える際にも、文字の形や位置を視覚的に捉えることが難しい場合は、漢字の構成を言葉で説明したり、部首やパーツに分けて確認したりすると、覚えやすくなることがあります。
ただし、こうした方法がすべての子どもに当てはまるわけではありません。WISC-Ⅴの結果だけで支援方法を決めるのではなく、本人がどのような場面で困っているのか、どのような方法なら取り組みやすいのかを確かめながら、個々に合ったサポートを考えることが大切です。
大切なのは、苦手なことをひたすら練習させるだけではなく、得意なことや本人に合った方法を活かしながら、学習や生活の困りごとを減らしていくことです。
WISC-Ⅴは、子どもの能力を順位づけするための検査ではなく、得意なことや苦手なことを理解し、必要な支援やサポートを考えるための手がかりの一つです。検査結果を学校や家庭での具体的な工夫につなげることで、子どもが自分の力を発揮しやすい環境を整えていきましょう。

苦手な力を伸ばしたい場合には、コグトレも選択肢の一つ

家庭や学校でのサポートによって、子どもが学習に取り組みやすい環境を整えることは大切です。それに加えて、苦手なことにも少しずつ取り組み、必要なスキルを身につけたいと考えている場合には、コグトレも選択肢の一つになります。
コグトレには、見本を見て形を写す課題や、図形を回転させたときの変化を考える課題、規則性を見つける課題、見た情報を素早く注意深く処理する課題などがあります。
こうした課題に取り組むことで、形を見て写す力や、図形の向きや位置関係を考える力、規則性を見つける力、注意深く情報を処理する力など、日常生活や学習に役立つスキルを身につけることを目指します。
取り組む際は、本人の得意なことや苦手なこと、課題に取り組む様子に合わせて、無理のないペースで進めることが大切です。また、トレーニングだけで苦手さを解決しようとするのではなく、家庭や学校での支援・サポートと組み合わせながら、身につけたスキルを日常生活や学習の中で活かせるように工夫しましょう。
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