
通常級と支援級はどっちがいい?就学相談や支援級判定を受けたときの考え方
毎年、秋頃になると、小学校の就学先についての検討や決定が進みます。ご家庭によって、通常の学級(通常級)を希望する方、支援学級(支援級)を希望する方、特別支援学校を希望する方など、さまざまな考え方があると思います。
就学相談や検査、教育相談などを通して、お子さんの様子やご家庭での状況について話し合ってきたものの、ご家族の希望と就学先の判定結果が異なる場合もあります。
就学先について、通常の学級や支援学級に関する判定を受けた保護者の方からは、次のようなご相談をいただくことがあります。
・支援級判定を受けてショックを受けた
・通常の学級を希望していたのに、支援学級を勧められた
・支援学級に入れた方がよいと言われたけれど、決断できない
・子どもに支援学級のことをどう説明すればよいか分からない
・支援学級に入れることで、将来の選択肢が狭まらないか心配
・周囲の子どもと違う環境で学ぶことに抵抗がある
就学相談や支援級判定を受けたあと、通常の学級と支援学級のどちらを選べばよいのか、悩んでいる保護者の方もいらっしゃると思います。
就学先の決定をどのように考えればよいのか。そして、入学までに家庭でできることや、今後必要になる支援には何があるのか。今回は、通常の学級と支援学級の選び方について、子どもの発達や学習面の支援という視点から考えていきたいと思います。
通常の学級を希望していたのに、支援級判定になった場合
就学相談でよくお聞きするのが、通常の学級を希望していたけれど、支援級判定になったというケースです。
「できれば、通常の学級でほかのお子さんと同じように教育を受け、周囲から刺激を受けながら成長してほしい」
「支援学級に入ると、学習が遅れてしまうのではないかと不安」
「中学校も支援学級になった場合、高校受験はどうなるのだろう」
通常の学級での学校生活を希望し、ほかの子どもたちと一緒に学ぶ経験を大切にしたいと考えるのは、保護者の方にとって自然なことだと思います。
お子さんの将来を考えると、小学校入学時にどのような環境で学ぶのがよいのか、不安や迷いが生じるのは当然のことです。
お子さんの今のステップを考える
そこで考えていきたいのは、お子さんの発達や学習状況に合わせたステップの組み方です。
例えば、現在のお子さんの様子として、次のような苦手さはないでしょうか。
・先生の話や指示を聞いて理解することが苦手
・黒板や教科書を見て、ノートに写すのに時間がかかる
・授業中、席について活動を続けることが難しい
・数字の意味や数の概念を理解することが難しい
もちろん、学校生活に必要な力をすべて100%身につけていなければならないわけではありません。
通常の学級で学んでいる子どもたちも、得意なことや苦手なことには個人差があります。例えば、ある力は80%程度発揮できるけれど、別の力は60%程度というように、一人ひとりの能力にはばらつきがあります。
では、学校生活に必要な力のうち、30%、40%程度しか発揮できていないものがある場合はどうでしょうか。
もちろん、難しい部分を誰かが教えてくれたり、個別に説明してもらったりすれば、できることもあるでしょう。しかし、通常の学級では30~40人程度の子どもたちに対して、担任の先生を中心に授業が進められます。そのため、一人ひとりの苦手さに合わせて、常に個別の支援を行うことは難しい場合があります。
一方、支援学級では、少人数での指導を基本として、一人ひとりの状況に応じた学習内容や指導方法を検討できる場合があります。学習の理解度や進み方に合わせて、個別の支援を受けられることは、支援学級で学ぶ大きな意味の一つです。
今は30%程度しかできていないことがあったとしても、お子さんに合った環境や支援の中で、少しずつできることを増やしていくことができます。
では、現在のお子さんには、どのような学習環境や支援が必要なのでしょうか。
通常の学級と支援学級を比較するときに大切なのは、学級の名称だけで判断するのではなく、それぞれの環境で実際にどのような支援を受けられるのかを確認することです。
通常の学級であっても、合理的配慮や個別の声かけ、教材の工夫、課題の量や時間の調整などによって、お子さんが学びやすい環境を整えられる場合があります。
一方で、学級全体で進む授業のペースについていくことが難しかったり、先生の説明を個別に聞く機会が十分に得られなかったりするお子さんもいます。そのような場合には、少人数で学習できる環境や、一人ひとりの理解度に合わせて学習内容や進め方を調整できる支援学級の方が、本人に合っていることもあります。
ただし、支援学級であれば必ず十分な個別支援を受けられるというわけではありません。学校や学級の体制、指導内容、通常の学級との交流のあり方などによって、実際に受けられる支援は異なります。

就学相談や学校との相談で確認すること
就学相談や学校との話し合いでは、次のような点を確認してみるとよいと思います。
・先生の話や指示を理解することが難しい場合、どのような方法で説明してもらえるのか
・板書を写すことに時間がかかる場合、ノートの取り方や教材を工夫してもらえるのか
・授業中に集中を保つことが難しい場合、座席や学習環境を調整してもらえるのか
・学習の理解に時間がかかる場合、本人の理解度に合わせて課題の量や進め方を調整してもらえるのか
・困ったときに、本人が先生に助けを求められる環境があるのか
・学級全体の授業についていくことが難しい場合、個別または少人数で学習する時間を確保できるのか
大切なのは、通常の学級と支援学級のどちらがよいかを先に決めることではありません。お子さんが何に困っているのか、どのような支援が必要なのかを具体的に整理し、必要な支援を実際に受けられる学習環境を考えることです。
必要な支援を受けながら、できることを少しずつ増やしていく。その積み重ねが、5年後、10年後に、お子さん自身ができることや選べることを増やしていくことにつながるのではないでしょうか。

支援学級を希望していたのに、通常の学級の判定になった場合
一方で、支援学級を希望していたけれど、通常の学級の判定になったというご相談をいただくこともあります。
幼稚園や保育園での様子や、小学校入学後の学校生活を想像したときに、
「指示をしても、理解して行動することができない」
「ひらがなが書けない」
「足し算を一緒にたくさん勉強しても、なかなか学習が進まない」
などの学習面や生活面の不安があり、支援学級を希望していたにもかかわらず、通常の学級の判定になったというケースです。
特に、学習面に対する不安が強いケースが多い印象です。実際にご相談を受けていると、WISC-Ⅴなどの知能検査でIQ80~90程度のお子さんについてご相談いただくこともあります。
ただし、就学先の判断はIQの数値だけで決まるものではありません。知能検査の結果だけでなく、日常生活や集団での様子、学習面の困難さ、必要な支援などを含めて検討することが大切です。また、就学先の検討や支援の考え方には地域による違いもあり、一律に判断することは難しいと感じています。
就学に向けて、家庭でもさまざまな学習の準備をしているけれど、うまく書けない、うまく理解できないという様子を見て、「あと半年で本当に理解できるようになるのだろうか」と不安を感じていらっしゃる保護者の方も多いと思います。
お子さんの今の得意不得意を整理する
そこで考えていきたいのは、WISC-Ⅴなどの知能検査の結果から、お子さんの得意・不得意のばらつきをどのように捉えるかということです。また、読み書きや計算などの学習を支える土台となる力が、どの程度身についているのかを考えることも大切です。
例えば、「ひらがなが書けない」という場合でも、その背景はさまざまです。
・まだ十分に練習する機会がなく、文字の書き方を知らない
・繰り返し練習しているけれど、なかなか書けるようにならない
・文字や言葉そのものへの興味が持ちにくい
同じ「ひらがなが書けない」という困りごとでも、背景によって必要な学習支援は異なります。
まだ十分に練習する機会がなかった場合は、お子さんの様子を見ながら、少しずつ文字に取り組む機会を増やしてみてもよいかもしれません。
一方で、繰り返し練習してもなかなか書けるようにならない場合は、これまでとは違う学習方法や支援の仕方を考える必要があります。
例えば、見た情報を正しく捉えて写す力が弱いお子さんは、文字を見て書き写すこと自体に大きな負荷がかかります。少し写しただけでも疲れてしまったり、苦手な書字課題に取り組むことが億劫になったりすることがあります。
通常の学級では、担任の先生が一人ひとりの苦手さに気づき、個別に対応するまでに時間がかかる場合もあります。ただし、通常の学級でも、合理的配慮や校内の支援体制によって、読み書きなどの苦手さに応じた支援を受けられる場合があります。
大切なのは、読み書きや計算などの苦手な部分をそのままにせず、学校でどのような学習支援を受けられるのかを確認することです。必要に応じて、学校以外でも、お子さんの苦手さに合った学習やトレーニングに取り組むことを考えてみましょう。
苦手なことを単に繰り返し練習するのではなく、なぜ難しいのかを理解し、その苦手さに合った方法で必要な力を身につけていくことが非常に大切です。

通常学級に在籍しながら、トレーニングで変化が見られた事例
当教室で、見た情報を正しく写すためのトレーニングに取り組んだお子さんの事例をご紹介します。
小学1年生のお子さんで、当初はひらがなやカタカナの模写に苦手さが見られました。文字を書く際には、斜めの線を正しく捉えることや、線の位置関係を理解することに難しさがありました。

トレーニングを重ねることで、見た情報を正しく写すことができるようになっていきました。その頃には、枠の中に文字を収めて書くことや、漢字の学習にも取り組めるようになりました。
通常の学級と支援学級のどちらに在籍する場合でも、学校でどのような支援を受けられるのかを把握することは大切です。学校での支援だけでは補いきれない部分があれば、学校以外の場所でも、お子さんの得意・不得意に合わせた学習やトレーニングの機会を持つことを考えてみてもよいと思います。
ぜひ、お子さんの得意なことや苦手なことを把握し、なぜ学習や生活の中で苦手さが生じているのかを考えてみてください。そして、必要な支援やスキルを身につけるために、どのような取り組みができるのかを考えていきましょう。
就学先についての考え方のまとめ
就学先について考えるとき、まだ見通しの持てない将来に対して、不安が大きくなるのは自然なことだと思います。
また、就学先の検討や学校での支援体制には地域による違いがあり、先生やクラスメイトとの相性、学校の環境などによっても、お子さんの過ごしやすさは変わってきます。
だからこそ、通常の学級か支援学級かという選択だけにとらわれず、今のお子さんに必要な支援を整理し、置かれた環境の中でどのように成長していけるかを考えてみることが大切です。
学校は、国語や算数などの学習をするだけの場所ではありません。友達や先生との関わりを通して、生活に必要な力やコミュニケーション、社会性を育んでいく場所でもあります。
通常の学級であっても、支援学級であっても、常に一人ひとりに合わせた個別の対応を受けられるとは限りません。学校でどのような支援を受けられるのかを確認しながら、学校だけでは補いきれない部分については、学校以外の場所で個別のサポートや学習支援を受けることも一つの方法です。
また、就学先について一人で考え続けるのではなく、誰かに話しながら考えを整理していくことも大切です。保護者の方自身が不安や迷いを言葉にすることで、お子さんにとって何が必要なのか、これからどのような支援を考えていけばよいのかが見えてくることもあります。
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